平成21年度 1級合格者インタビュー 1

2010.3.30 掲載

マブチデザイン 代表 馬渕 好弘 氏

── 機械設計技術者試験制度をお知りになったきっかけ、また受験された動機について教えてください。

馬渕:私は平成12年度に技術士第一次試験に合格しましたが、もう少し機械設計に焦点を絞って知識を体系付ける方法はないものか、と探していたところ、この試験を知りました。翌年の平成13年度に2級を受験し、今回は技術者としてもう少し俯瞰的な視点を持つ必要性を感じて1級に挑戦しました。



 ── 工業会が主催した受験講習会を受講されましたか?

馬渕:受講しておりません。



 ── 試験の難易度はいかがでしたか?


馬渕:それぞれの科目について印象はありますが、中でも印象に残るのは機械総合基礎と環境経営でした。機械総合基礎は時間的に厳しかったのですが、実務での基本設計前のデザインレビューにおいて
「商品コンセプトから、こんな機能展開表が考えられ、スケッチをするとこんな感じになり、こんな材質と加工法で見積もると、ざっとこれくらいでこういった箇所が課題だ」
こういったことが即座に打ち出せる設計者が揃っていれば、良い物ができると感じました。今回の受験経験は、単に技術力を計る試験というだけでなく、設計業務にあたるうえで今後の課題を再認識することができたような気がします。
環境経営は、環境に関連する規格、指令、法律、条約や公害問題などの経緯と内容、実際の対応といった確立された視点からの展開だけでなく、今後具体的に実行されるであろう環境問題対策という視点の必要性も感じました。




 ── 試験勉強にあたって実行した勉強方法は?

馬渕:過去問題集の内容を把握・整理するとともに問題集の解説から理解が必要だと思われる事項を自分なりにピックアップしてみる。そんな方法を実践しました。また、基本設計・計画設計・総合管理業務を行ううえで必要な事柄は何かを考えるようにして問題趣旨の理解に努めました。
計算問題は、過去問題集と2級受験の際に使用した日刊工業新聞社の通信教育講座テキストを主体に学習を進めました。
小論文は予想していた課題ではありませんでしたが(笑)、上述のような事柄を体系的に理解するという心がけが活かされて結果的に内容を濃くしたのではないかと思います。小論文対策としては「理科系の作文技術」 (木下是雄著 中公新書 (624)) を参考にしました。



 ── これから1級受験を考えている技術者の方に対して何かアドバイスがあれば教えてください。

馬渕:通常、試験というと「こんな基本書が存在して、こんなやり方をします」という形が多いと思います。しかし、そのような具体的な情報が少なくても、"どのような情報を入手し、どのようなプロセスを経てどのようなアウトプットを携えて試験に臨むか"という自分なりの問題解決手法を考えて実行できたことは今後のさまざまな場面で生きてくるのではないかと思っています。受験対策の経験や挑戦は自分自身のスキルアップやブラッシュアップにつながるものです。自分を高める良い機会と捉えると、モチベーションもあがるのではないでしょうか。



 ── 1級機械設計技術者として、これからの抱負があれば教えてください。

馬渕:私は現在、個人事業主として組立機や検査機などの専用機器、治具等の設計業務を行っていますが、要求獲得から提案、実際の作業に至る今以上のトータルな視野の必要性を感じて1級受験を決めました。
今回の試験勉強を通じて得た知識は、単に知識としてとどめるのではなく実際の業務プロセスとして組み込めるよう取り組んでゆきたいと考えています。これらの課題がクリアされ自分でも納得できる仕事ができるようになったときには、技術士第二次試験に挑戦してみたいですね。
1級に合格したとは言っても「機械」という分野はまだまだ奥深く、本年度試験講評にあったように「生涯を通じて勉強」になるであろうことを改めて実感しています。時間や予算など限りがあるなかで、専門性の追求と部分最適に陥らない俯瞰的な視野バランスを意識して少しでもよい物やサービスを提供したいと思います。



 ── どうもありがとうございました。