令和7年度 機械設計技術者試験講評
令和7年度機械設計技術者試験に関しての講評
2025年度の機械設計技術者試験の発表が1月9日にありました。受験された皆様の成果はいかがだったでしょうか。各級とも試験科目数が多く、全体的にボリュームのある試験内容になっています。合格された方はこれら全てをクリアし、大変素晴らしい成果を得たことになり、機械設計技術者としての実力を大いに誇ってよいと思います。一方で残念ながら今回は願いがかなわなかった方も、本試験を通じて設計者として今後進むべき方向性が見えてきたのではないでしょうか。立ち止まることなく今回の経験をもとに、次回の栄冠を目指してステップ・バイ・ステップで頑張って頂きたいと願っております。
さて、試験内容と成績結果に関して少し考察してみます。本試験の科目は、前述したとおり機械工学の多方面に渡った内容となっています。これは、機械設計者には広範囲の知識と経験が求められるということでもあります。したがって、本試験の対象は《機械設計技術者》と謳っていますが、機械技術者全体に通じるエンジニアリグの試験内容で構成されています。試験問題は大きく分類すると、技術計算問題と記述式知識問題になります。前者の代表が、昔から機械工学の4大力学と呼ばれる力学系の問題であり、後者に分類されるのが材料・加工系の科目となるでしょう。計算問題は苦手だという声をよく聞きます。特に学校を卒業して長らく経つ企業設計者には、公式も忘れていて対応が難しい面もあるかもしれません。これを克服するためには、何よりも過去問題をなるべく多く解いてみることです。10年ぐらいの過去問を調べてみると、問題背景は違っても同じ分野の計算問題が多く見受けられます。今後、試験に挑戦する方には、まずは過去問の検討を推薦したいと思います。
3級、2級の問題はマークシート方式が多いので、計算過程は評価されませんが、2級の応用・総合問題や1級の実技課題は、結果以上に計算過程が重要になります。思考の流れに沿った計算プロセスを解答用紙に明確に記述することがとても大切です。今回の試験における2級応用・総合、1級実技課題の点数は押しなべて良い結果となりました。採点担当者が計算過程をじっくりと評価していただいたことも影響していると思います。
計算問題以外の知識問題に関しては、材料や加工科目があります。こちらは、製品設計ではなく生産技術に関わる設問が中心になります。あらゆる製品は、設計を終えた後、製造されるわけですので、設計者にあっても生産技術を考慮した製品設計が求められます。それ故に本試験では生産技術関連科目も設定されているのです。しかし、最近では仕事分担が細分化・専門化しているため、設計者が隣の工場でモノがつくられているにもかかわらず、現場を見たことがないという話も聞きます。さらに安価な海外製品を調達する流れが加速し、自社の生産技術を軽視する傾向に拍車がかかっているのでしょうか。そのためだけではないと思いますが、意外と材料や加工に関する科目を不得手とする受験生も少なからず見られます。海外事情の悪化によって自社製造に転換する企業も最近見受けられますが、一度生じた空白を埋めるためには相当の努力が必要となります。設計者の皆様には日ごろから生産技術にも興味を持って技術・知識習得に励んでほしいものです。
さて最近の設計試験の受験数を見ると、横ばいが続いています。いろいろ原因は考えられると思います。学校教育でも社会でもAI、メタバース、データサイエンスなどが注目されることで、従来の機械工学の既成科目が弱体化されている事情もあるのかもしれません。しかし、DXソリューションの根底となるのは、機械工学の基盤技術であることは将来に渡っても変わるものではありません。個人受験希望者だけではなく、企業や学校においも、機械技術者の育成と自己研鑽の環境作りのために本試験制度を多いに活用していただくことを期待しております。
機械設計技術者出題委員会
委員長 朝比奈 奎一